2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

教師たちの戦後3

中学五年になってからも、鉄拳教師、丸山鉄也先生は、相変わらずクラスの担任を続けていた。その丸山先生ことボーイングも、この時期になるとさすがに態度を変え始めていた。教師のなかには、生徒に対して妙な丁寧語を使い始めた者もいたが、さすがにボーイ…

教師たちの戦後2

当時、私の周りにいた優等生のなかに、成績の落ちた生徒が数人いたことは事実である。もちろん、一方には、成績も落さず、読書にも熱心な生徒も少なくなかった。記憶に残るところでは、藤井陽一郎、市川靖郎など名を思い出す。努力家で物理学の古典などをよ…

教師たちの戦後

敗戦後二年が経ち、学校の空気も大きく変わり始めた。敗戦の混乱は、一時的にせよ、生徒たちに、鉄の鎖から解放されたような自由を与えた。しかし教師にたちにとって敗戦と言う経験は、想像を絶する重荷として意識されていたに違いない。なぜなら、教師の多…

戦後の学校3

旧制中学も五年になると、生徒たちは一段と大人びてくる。教室の雰囲気も次第に進学組と卒業組とに色分けされ、一流大学を目指す進学組のなかには授業が終ると、東大受験を目指す寺田實のように受験勉強のために駆け足で家に帰る者、また塾に直行する者、受…

戦後の学校2

教師からの圧力が徐々に薄れるにつれ、生徒はしばしば規則を無視した行動をとるようになった。無断で休む者もあり、授業を無視して教室内を勝手に歩きまわる者もいた。 ある時、数学の授業中に私を含めて五、六人生徒が窓から一挙に脱出したことがある。脱出…